母は去年、脳梗塞で倒れました。
元気に走りまわり、バリバリ働いていたのに突然のことでした。
3か月の入院のあと、帰って来た母は、片麻痺で左手左足がまったく使えなくなっていました。
倒れる前までは前向きで明るく、活動的な母だったのに、体が不自由になるとすべてが億劫になってしまったようで、
「私は何もできなくなってしまった」
と、すっかり気落ちした様子でした。
毎日毎日することもなく、一日中テレビを見てぼんやりして過ごすばかりです。
仕事を失い、動くこともできず、家事も私がすべてやっているので、母は本当にするべきことが何もない状態でした。
そうこうするうちに母の日がやってきました。
私はカーネーションの花束と一緒に、片手で使える洗濯ピンチ「いちどにありがとう」を母に贈りました。
何も知らず包みを開けた母はびっくり。
「洗濯ピンチなんかもらっても、私は片手だからできないよ」
と言いました。
そこで私は、この「いちどにありがとう」は片手だけで洗濯ものが干せる道具なんだよ、と説明をしました。
実際につかってみると、本当に母は右手一本で靴下やハンカチをピンチに干せることがわかりました。
「これだと自分で洗濯物が干せるね!」
母の目に光がよみがえりました。
母はもともと働くのが好きなのです。
病で片手を失い、掃除も洗濯もできなくなって落ち込んでいたので、
「自分で家事ができる」
ということを知って心から喜んだのでした。
「私にもできるね!」
以来、母は毎朝このピンチを使って自分の洗濯物を干しています。
それどころかいろいろチャレンジする気力が戻ってきたようで、片手で包丁をもって料理をしたり、モップがけをしたり、いろいろなことに挑戦しています。
その変貌ぶりは家族みんなが驚くほどです。
「このピンチのおかげだね。『いちどにありがとう』に、ありがとうだね」
と母は言っています。
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